『人口から読む日本の歴史』 鬼頭 宏(講談社学術文庫)

従来の日本の歴史観を多くを覆させられる本である。

    

『古事記』もそうだが、子供の頃よく言われたのに、次のようなものがある。

昔々を遡れば、数家族に行き着くので、日本人は天皇からわれわれ下々まで、全部親戚みたいなものだという俗説を親や友人から聞かされた。

いつもそんなことはないだろうと思ってきたが、この本には紀元前3世紀の縄文時代頃の日本の人口は15万から25万人くらいとしている。

もちろん、北海道から沖縄までに分布した人間の数の結果がそのようなものなので、人口密度は非常に低かったわけだが。

よく知られているように縄文時代は、採取狩猟時代で、日本の東北、東日本に人口の分布が強く、西日本は人口の少ない地域だった。

それが、弥生時代頃の米作農業の進展に伴い、この人口分布の東西の差は逆転し、関西以降の西日本が日本の人口の中心になる。

縄文時代にすでに十万人以上もいたのだから、それは一つの家族から分かれたと言った次元ではなかったのであり、「日本人は元を辿れば一家族」(笹川良一みたいだが)は、大嘘なのである。

また、日本の家族の原型のように言われる、祖父母、両親、そして子供と言った「三世代同居家族」も、江戸時代中期以後にできたもので、日本に古来からあったものではないこと。

それは、家族の人間全員を農業作業に動員する体制で出来上がったもので、そこでは長男以外の男たちは、婿に行かなければ、一生を家のなかで「作男」のような形でいたものであった。

さらに、日本の男女のほとんどが生涯で、一度は結婚するようになったのは、江戸時代後期のことだそうだ。

その他、いろいろと驚くようなことが記述されているので、ご興味のある方は是非お読みください。

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