白坂依志夫、死去

シナリオ・ライターの白坂依志夫が亡くなった、82歳。
良く知られているように、八住利雄の息子で本名は八住利義、やすみとしよし。
ペンネームの由来が、阪神の選手白坂と吉田義雄であるように、反体制とまでは言えずとも、常に反主流派的だった。

作品を記録で見てみると、意外にも大映が多く、作風的に合っていると思われる東宝や日活作品は、そう多くない。
企画されたがいろいろな事情で途中で没になったものも多かったのだろう。
勿論、大映では『青空娘』以来の増村保造作品が良く、大映最後の1本である『盲獣』を見た時は本当に驚いた。
船越英二、緑魔子、千石規子の3人しか出て来ない映画で、これは世界中にもまずない作品だと思う。
初期の秀作『野獣死すべし』には、ご本人も出ているのはご愛敬だが、この辺は当時の大スター石原慎太郎も意識していたのではないか。

晩年に出した2冊の本、自身の自叙伝については賛否両論はあろうが、書かれている内容は多分ほとんど本当であり、今となっては当時の下り坂の日本映画界の実態を描くものとして貴重な記録だと思う。
だが、この本の読後感が決して悪くないのは、彼が日本映画を好きだったことが分かるからである。
戦後世代として、初めて日本映画界の脚本に現れたライターのご冥福をお祈りする。

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