『禁男の砂』

昭和30年代、「海女女優」として有名だった泉京子の主演映画。
共演は、大木実、褌姿が珍しい美少年石浜朗、泉と対立する悪役が瞳麗子。
子供を亡くして気が狂った女に桂木洋子、大木の親が飯田蝶子と坂本武と、かなり豪華な配役。

監督は松竹には少ないアクション専門の堀内真直。
音楽は『水戸黄門』の木下忠司。
当時すでに「バナナ・ボート」がヒットしていたので、カリプソ調の歌が歌われ、泉らが村祭りで踊るのが、笑いをこらえるのが大変だった。
日本映画史上、黒澤明の『隠し砦の三悪人』の火祭りの舞踏シーンと並ぶ珍場面だろう。どちらも、日劇、松竹というダンシング・チームを持っていたので、できた。

原作は房総にいた近藤啓太郎で、真面目な小説らしいが、ここでは泉の海女姿、衣が濡れて乳房が見えたり、踊りや乱闘で裾がはだけてパンツが見えるところが最大の売物。
今見ると、どうということのない映像だが、邦画メジャーで見られるのは珍しかったので、大ヒットし4本も作られた。
出来としては、筋に飛躍や破綻のない新東宝映画という感じだろう。
本来、際物なのに真面目に作っているのが実におかしい。

脚本とチーフ助監督が今は小説家の高橋治。
篠田正浩や山田太一も助監督で、困難な水中撮影を担当したらしい。
彼らは「清く正しい松竹女性映画」の破綻を密かに感じていたそうだ。
川崎市民ミュージアム

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