『やさしいにっぽん人』

時間的には途中からになることは分かっていたが、どこかで見たことがあると思って見ていたが、すぐに見ていないことに気づき、また意味がさっぱり分からない。

緑魔子の「やさしいにっぽん人」の歌をLPの『松村禎三の映画音楽』で何度も聴いていたので、どこかで見ているとすっかり思い込んでいたのだ。

もう一度最初から見ると、当然にも話はよく分かり、結構面白い。戦争中の沖縄の島の集団自決で唯一生き残った、謝花治の河原崎長一郎と恋人の緑魔子の話。

河原崎はオートバイ店の修理で働いていて、緑は小劇団の演出助手兼女優。

河原崎の店や劇団の人間に蟹江敬三、伊丹十三、伊藤聡一、石橋蓮司、さらに脇で桜井浩子、横山リエなどが出てくる。当時のアングラ・小劇場の役者が総出演で、出ていないのは蜷川幸雄くらい。新劇俳優の渡辺美佐子、東山千枝子、平田守らも1シーンづつ出ている。

話は、沖縄をめぐる劇だが、途中でだれてくる。

理由は、劇作法で言えば、「起承転結」の内、起・承までは良いのだが、転・結に来て息が切れた感じになる。結局は緑魔子と河原崎の裸、そして最後は、河原崎のオートバイを燃やしてエンドになる。二人のセックス・シーンに入るところでカット、映倫審査料103,500円のタイトルの挿入には笑った。

作品としては少し長いが、1970年代の反体制気分とアングラ文化が大変によく記録された作品と言えるだろう。劇団の稽古場、緑と河原崎の部屋、さらに小さな飲み屋以外は、全部外部のロケーション撮影だと思われ、1970年代の情景そのものである。

もう一本の『沖縄列島』は、1969年夏の沖縄を記録したもので、なかなかの力作だが、沖縄の現実は今もほとんど変わっていないと思われる。ナレーションの岡村春彦と村松克己の内、村松克己はお亡くなりになっていることに気づいた。彼は、大学時代の劇団の先輩で、黒テントの他、映画にも結構出ていたが、確か胃がんで亡くなられたと記憶している。

早稲田松竹

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