1950年代的趣向

石立鉄男が死んだそうだ、64歳。
彼の映画作品で一番古いものの一つは、大映の1966年の『殺人者』らしいが(安田公義監督の佳作で、安田道代の大映でのデビュー作でもある)、当時で一番興味深いのは、同年の日活の蔵原惟善監督の三島由紀夫原作、浅丘ルリ子主演の『愛の渇き』の下男役だろう。
映像(間宮義雄)と音楽(黛敏郎)が素晴しい作品だったが、内容は難しくてさっぱり分からなかった。
数年前、大森キネカで見たときに、三島の倒錯した性意識そのものだと分かった。

石立は、近年は役者をやめ、熱海でマージャン屋をやっていたそうだ。
熱海、マージャン、とくれば小津安二郎の『東京物語』である。

さらに、小津の失敗作と言われている『東京暮色』(私はそうは思わないが、時代の風俗に小津が完全にズレている)で、笠智衆を捨てた元妻山田五十鈴が、現在の夫中村伸郎と五反田駅付近でやっているのがマージャン屋であった。

いずれにせよ、熱海とマージャン屋とは実に古い、1950年代的趣向である。
熱海もマージャンも、21世紀には無縁な存在である。
私が就職した若い頃、忘年会旅行というと必ず熱海だったが。

1970年代以降をテレビという言わば最先端のメディアに活躍していた石立が、半ば隠遁して暮らしていたのが、1950年代的趣向の中だったというのは、微笑ましい感じがした。
ご冥福を祈る。

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コメント

  1. 野々山定夫 より:

    Unknown
    石立鉄男の急逝から1950年代的趣向とは、素敵な連想です。わたしも合掌。

    毎朝、愛読させていただいております。文化の海ですね。

    繕いで変換できます。