竹脇無我は、いつから名優になったの

竹脇無我が亡くなられた。
そして、テレビの芸能ニュースでは「昭和の名優がまた亡くなった」とのナレーションがついていた。
こういうテレビの解説を見ると、結局説明を書いた連中が映画の竹脇無我を見ていないことが良く分かる。
竹脇無我が、スターだったことは間違いない。また嫌味のない良い役者で、私も好きな方である。
だが、名優とは言えないだろう。
むしろ、ルックスと声は素晴らしいが、演技は上手くない、大根に近い役者だったと言うべきだったと思う。

彼は、アラン・ドロンばりの甘いマスクと父親譲りの声で、松竹のスターにさせられた。
だが、ほとんどろくな作品に出ていない。
『星雲やくざ』シリーズなども見たが、良くも悪くもなく、全く印象に残らない、アクの強さのない俳優だった。
この1960年代初めの彼の出演作には大したものがないので、今DVD等で見ることはとても難しい。
70年代には、『人生劇場』等に出ていて、それなりの演技を見せているが。

唯一あるのが、篠田正浩監督の傑作『乾いた花』での、軽薄な人気歌手役だろう。
松崎とか言う若手歌手で、「チャキリスばり」と子分の中原孝二から説明されて、刑務所にいた池部良は、
「なんだチャキリスばりってえのは」と聞き返す。
チャキリスばりとは、もちろん『ウエスト・サイド物語』で人気者になったジョージ・チャキリスである。

もし、竹脇無我が、名優と言われていたとしたら、うつ病になることもなかったはずだ。
真面目な彼は、「自分は下手であり、何とかして上手くなりたい」と思い悩んだからこそ鬱病になったのである。

同時期に、同じ二世役者として松竹でデビューした田村正和が、全くの大根役者なのに、少しも気にせず悠々と相変わらずスターを演じているのとは、誠に対照的である。
まじめすぎたスターのご冥福を祈る。

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コメント

  1. M.飯田 より:

    竹脇無我の思い出
     昔、テレビで竹脇と森繁が親子の役の「だいこんの花」を観ていた。たしかに芸は余りうまくはなかったと思うが、ふたりの掛け合いは本当の親子のようなほのぼのするものがあった。
     この間、ネットで昔「女学生」を歌っていた安達明が最近亡くなったことを知った。
     60歳の人が亡くなっていくのを聞くと、年代が近いだけに悲しい。ご冥福を祈ります。

  2. なかやま より:

    竹脇無我さんの作品を知らない人のコメントですね
    さりげない所作や目だけで表現できる、心に響く俳優さんでした。

  3. ファンの方の気持ちは分かります。
    しかし、彼を上手い役者とは言えないと思います。
    ここに書いたように、彼自身が自分を下手だと思っていたので、悩み、鬱にもなったのだと思います。

    私も、嫌いではありません。
    同様に、渡哲也も、下手でしたが味のある役者でした。
    その点、渡瀬恒彦の方が上手かったけど、当たり役はなかったことと似ていますね。

    • 広い世界は より:

      渡瀬恒彦、「男はつらいよ」のサーカスのオートバイ乗り、何を考えてるか分からない、でも、男としては魅力的。中原理恵に好かれるが、髪結いの亭主みたいで幸せにはなれない。演技うま。竹脇無我でしたっけ。木下恵介劇場で栗原小巻の恋人役淡白な役者?「若者たち」の山本圭の代わりはできない人。栗原・山本は舞台でシェイクスピアをやってる、演技の質、振り幅が大きいと思う。目とか仕草だけで演技がやれたのは、それはそれで竹脇も凄い。武器が違っただけ。

    • まっくす君 より:

      役者の演技って?何でしょうね?
      でも少なくとも、向田邦子さん脚本の「幸福」では 竹脇無我さんが居なければ成り立たないドラマでした。
      山崎努さん 岸恵子さん 津川雅彦さん 笠智衆さんを引っ張って、無口で愚直な男の役。
      あの役は、竹脇無我さんでないと出来ない役だと思います。中田喜子さんに津川雅彦さんが云う台詞も感動的です。

      一度、御覧になっては 如何でしょう。

      「幸福」
      アマゾンで、ウルトラプレミアの値段のDVDに成っていますが。

      • 広い世界は より:

        「幸福」、機会があれば観てみたいと思います。
        竹脇さんの役者としてのイメージは悪くないです。僕は好きです。
        役者の演技は、その作品の中で生きていたか感動させたかが大事で、
        名優という種類の役者がいるわけではない。三船や役所は上手いけど
        すべての作品で名演技だとは思わない。