『女人嵯峨』

こういう劇を見ると、シェークスピアの名を出すのは恐れ多いが、川口松太郎や北条秀治、菊田一夫らはよく劇を知っていたなと思う。吉本隆明によれば、「劇的言語帯は物語言語帯の上に成立する」もので、簡単に言えば筋が分からなければドラマは分からないとのことである。

松竹の城戸四郎は、あたらしい企画が来たとき、「それを一言で言ってみろ、一言で要約できないようではテーマがはっきりしていないのだから駄目!」と言ったそうだが、名言である。

薬子の乱から承和の変までの約40年間を2時間でやり、そこにドラマを作ろうとしても物理的に無理というものだ。

もし、このままでやるとすれば、磯田道史先生ののような歴史家に劇中に登場して貰い「ブレヒト的」に劇と背景を説明する。そうでもしないと次々と起こる事件の意味もドラマも理解できない。事実、私の前にいた若い女性などは、後半はほとんど眠られているようで、コックリしていたが無理もない。

斎藤真さんによれば、この企画は元俳優座制作部の山崎菊雄さんのもので、劇団俳優座に提案したが出来ず、自ら退団して始めたものだとのこと。だが、堀江安夫の脚本が問題で、元は6時間以上もかかるもので、それを演出の中野誠也が切りに切って2時間の劇にしたのだそうだ。山崎さんの頭にあったのは、斎藤漣作の『クスコ』で、私もセゾン劇場で見たが、渡辺美佐子の主演でなかなか面白かった記憶がある。

要は、平安時代の皇室をめぐる政争はすべて女性のものだったとなるが、それが簡潔に語られていないので、感動しようもないのだ。戦前なら、不敬罪で関係者は全員逮捕起訴されただろうと思った。

久しぶりに俳優座劇場に行ったわけだが、この反バリア・フリー劇場は、階段だらけでエスカレーター、エレベーターは一切になくて本当にひどい。高齢者、障害者の入場を拒否しているとしか言いようがない。大問題だと私は思う。

俳優座劇場

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