ロシアにあるメシア思想 『死者からの手紙』

コンスタンチン・ロブシャンスキー監督の『死者からの手紙』を見るが、核戦争とその汚染にあった後の世界で、地下にいて生き延びた人たちを描く作品。感じがタルコフスキーの『ストーカー』に似ていると思うと、ロブシャンスキーは、助監督をやっていたのだそうだ。

役者と美術が非常に良いが、筋は結局同じようなところを数人の連中がうろうろとしているだけなので劇的変化は少なくてやや退屈である。

ただ、最後に子どもたちの列が地上に出て、破壊と汚染の中を進行していくところでは、作者たちの未来への思いが伝わってきて感動した。

1986年というソ連崩壊の直前の状況を反映していると思える。

終了後の井上徹さんのお話では、主にロシア、ソ連でのSF的映画の歴史が詳細に解説されて非常に面白かった。特に、晩年のタルコフスキーに見られるように、ロシアには「救世主・メシア思想」が国全体にあるとのことには驚いた。

かつてオウム真理教が最盛期の頃、彼らはソ連崩壊後のロシアでも本気で布教していて、それなりに信者を得ていたことも、そうしたロシアの民衆の意思の現れなのだろうと思った。

井上さんが言うように、自分が犠牲になっても、世界を救うなど余計なお世話だと我々には思えるのだが。

川崎市民ミュージアム

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする