『瞼の母』

中村錦之助主演、長谷川伸原作、加藤泰監督の名作である。やはり涙なくては見られない作品だった。
主演の錦之助が良いのは勿論だが、母親おはまを演じる木暮美千代が良い。この人はもっと評価されて良い女優だろう。娯楽映画が主だったので、あまり高い評価を受けていないが、大変上手い女優だったと思う。溝口健二の『祇園囃子』はもっと評価されるべき演技だったと思う。

このおはまの昔なじみで、ゆすりに来る悪党・金五郎が誰か分からなかったが、家に戻って調べると原健策(松原千明の父)だった。ゆすりのシーンで尻をまくるところが良い。
この映画は、沢村貞子、浪花千栄子。
台詞がないが、沢村と錦之助のやり取りを聞いているだけの明石潮など、脇役がとても良い。
盲目のチョンガレ引きの浪花への金をごまかそうとする星十郎も良い。
昔の映画を見て楽しいのは、良い脇役が沢山出てくるところである。
「わた鬼」の赤木春江も木暮の茶屋の女中で出ている。赤木は、旦那が東映の部長だったので、この頃の東映映画に多数出ている。

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