横浜稲門会の伝統文化鑑賞会で、歌舞伎座に行く。
六月大歌舞伎で、本来は団菊祭であるようだ。例によって初めは舞踊で、『寿式三番叟』と『女車引』は舞踊嫌いなので、どうでもよい。
次は、『石切り梶原』で、梶原平三は中村吉右衛門。
以前、先代の白鷗で見たが、これはかなり短縮されたもので、当時すでに体力の弱っていた白鴎に合わせて、切る場面だけだったが、かなり長い前段があったことを知る。
最後は、片岡仁左衛門で『封印切』。元は、近松門左衛門の『冥途の飛脚』で、映画では内田吐夢監督、中村錦之助と有馬稲子の共演で『浪花の恋の物語』となっていて、作者の近松が片岡千恵蔵で、錦之助たちを見ているというのが、前衛的で面白かった記憶がある。
内田にしても、伊藤大輔にしても、市川雷蔵の『弁天小僧』でも劇中劇をやり、まるで前衛劇だと思わせたように、意外にも若さと新しさがあったのだ。
仁左衛門は、出だしから「じゃらじゃら」として、まさに関西のつっころばしを上手く演じているが、今でいえば明石家さんまの感じであり、さすがと思う。そして、八衛門(片岡愛之助)に挑発されて金包みの封印を切ってしまう悲劇に至る。
吉右衛門と仁左衛門と言えば、最も歌舞伎的な役者で私は堪能したが、やや華やかさに欠けたかなとも思った。
一緒に行った鈴木君と、蒲田で降りて、軽く飲んで戻る。