テレビ朝日で、山田洋次監督の『武士の一分』を見る。
正直に言って、良く出来た丁寧に作られた映画だが、どこか感動できない。
木村拓哉は役者としては、とても上手いし、相手役の壇れいも非常に素晴らしいが、木村拓哉の悲しみも、怒り、あるいは壇の申し訳なさも、全く真に迫って来ない。
何故か、よく分からないが、結局江戸時代のこと、というのが私たちが感動することを遠ざけるのか。
多分、ケレンがない性だと思う。
盲目の剣士と言えば、『大菩薩峠』の机竜之助、『座頭市』の市らがいる。
また、片目、片腕の邪剣・丹下左善もいるが、こうした盲目の者が、清眼者に勝つことを納得させるには、やはりケレンが必要で、そこが欠けているためだろう。
盲目が、目明きに勝つという非常識な筋は、真面目人間の山田洋次には無理な話だったのではないか。
撮影と照明は、非常に良い。
昔の日本家屋の暗さをよく表現している。
近年のテレビ時代劇が、きんきらきんに明るいのと正反対であり、当然だが、さすがである。