夜、見るものもなかったので、昔撮っておいた高田浩吉の「伝七捕物帳」を見る。
夜、江戸の町に宙に浮く駕籠が出て、そこから宇都谷峠で起こった殺人事件のことを言う。
過去は、長崎で起きた抜け荷と、その主人を殺した連中の悪事が暴かれる。
それは、高田が二役の役者の犯行だったことも分かる。
こう書くと日本映画を見ている方は、『雪之丞変化』ではないかと思うに違いない。
そうこれは、松竹京都がサイレント時代に放った大ヒット映画『雪之丞変化』のリメイクに近いものなのだ。
これは大変なヒットで、長谷川、当時は林長二郎だが、これのヒットで「ミーハー族」という言葉ができたくらいだ。
ミーとは蜜豆を好む女で、ハーは林長二郎のハーなのだ。
その後、彼は松竹が約束の歌舞伎復帰を叶えてくれなかったこと等で、新興勢力の東宝に移籍するが、義理を欠いた者との非難を浴び、ナイフで頬を切られることなる。
そして、林長二郎を返上し、本名の長谷川一夫として東宝の大スターになる。
この林長二郎の大ヒットは、戦後も松竹京都に残っていたことになる。
そう考えると、高田浩吉は、どこか長谷川一夫に似ている。
この二人に共通するのは、酒も女もやらないまじめ人間だったことだ。
高田が長谷川一夫に優越しているのは、歌が上手いことであり、ここでも2曲披露している。
筋とはほとんど関係ないが、川田晴久と鹿島蜜夫とボーイズが出てきて、歌を披露する。
その唄で、インチキ踊りを披露するのは、伝七の子分の伴淳三郎で、実は彼こそは、東宝からアキレタボーイズを引き抜いた張本人なのだが、1955年のこの頃では、川田と伴淳も和解していたのだろうと思う。
コメント
1935年製作の「雪之丞変化」はトーキー映画ですよ。昔、旧フィルムセンターの衣笠貞之助特集で総集編を見たことがあります。三部作をまとめたものですが、それでも傑作だと思いました。東海林太郎の「むらさき小唄」はこの映画の主題歌です。この時期の衣笠作品が松竹京都のフィルム庫の火事で大部分がなくなっているのが残念です。
ご指摘ありがとうございます。
最初の『稚児の剣法』と間違えました。