テキサスの小さな田舎町に、牛のビッグ・トレイルの連中がやって来る。
いきなりの大群の消費と商取引で、町中が好景気にわきあがる。
もちろん、サルーンや売春宿もでき、他所から多くの男女がやってくる。
町の保安官は、正義感の強いロバート・ライアン。
私は、ロバート・ライアンが大好きなので、トイレにも行かず一気に最後まで見てしまう。
音楽が有名で、ライオネル・ニューマン、撮影は美しい画面で知られるルシアン・バラード、20世紀フォックスのシネマスコープ作品である。
そこに悪漢の一味のブリッグスが来て、サルーンを作り、インチキポーカーで暴利を貪ろうとする。
ライアンは、いちいちに厳しく対処するが、次第に町の中で孤立して行く。
この辺は、フレッド・ジネンマン監督の『真昼の決闘』に似ているが、あれを少しゆるくしてより娯楽的にした作品だともいえる。
かつて小泉純一郎が、アメリカでブッシュ大統領に会った時、この『真昼の決闘』を話題にしたが、ブッシュは「その映画はなに」と知らず、会話にならなかった。
それも当然で、『ハイ・ヌーン』は、ニューロチック・ウエスタンとのことで、アメリカではまったくヒットしていず、ブッシュは知らなかったからである。
このライアンの主演作には、二つの意味があると思う。
一つは、ライアンが、頭に打撃を受けたために、ときどき目が見えなくすることで、まるで脳梗塞の発作みたいだった。
これでは、まるで誇り高き男ではなく、血圧高き男である。
もう一つは、このビック・トレイルによって町が大好況を迎えることである。
当初は、1食50セントだったのが、いつの間にか2ドルになり、洋品屋は、すべてのショーウィンドの物の値段を倍にしてしまう。
需要が供給を上回るから物価が上昇するのは当然である。
これは、戦後の日本社会もそうだったと思う。
地方から多くの若者が都市に来て旺盛な需要を作り出し、それが高度成長の源になった。
途中で、ライアンは町の連中に向かっていう。
「お前たちがやっていることはサルーンのブリッグスのやっていることと変わりはない!」
要は、暴利を貪っているだけであり、程度の問題に過ぎないのだと言う。
これは、戦後の日本の経済社会によく似ていると思う。
そのことは、かつて新宿歌舞伎町に中国人等が来たことに似ている。景気がよく富のあるところには、世界中から人が来るのである。
それを排除した石原慎太郎知事の政策が、景気を低下させた一因であることは言うまでもないだろう。
だが、少子高齢化になった日本は、どうなるのだろうか。
ビッグ・トレイルが去った後の物語は、この映画では描かれていないので、分からないが。
イマジカ・シネマ
コメント
真昼の決闘
「『真昼の決闘』は、ホワイトハウス内にある映写室で、歴代大統領が最もよく見ている映画。大統領に人気があるのは、困難に一人孤独に立ち向かう主人公の姿に共感するためでは?」
という内容の記事を新聞で読んだことがありますけどね。
どうなんでしょう?
どうなのかな
あの時のニュースでは、ブッシュは意味がよくわからなかくて戸惑ったと記憶しています。
『真昼の決闘』は、評価は高いが、アメリカ国内では当たらなかった作品です。