たまには新作アメリカ映画も見る。ジョージ・クルーニーが監督。CBSの看板ニュースキャスターだったエド・マローが主人公。
CBSのと書いたのは、映画では触れられていないが、彼は1930年代からCBSラジオのニュース・キャスターで、「デイス・イズ・フロム・ロンドン」や「アイ・キャン・ヒア・イット・ナウ」など大変人気があり、それぞれのLPが何枚も出ている。私が持っているのは、それぞれVOL・1である。
1937年たまたま欧州にいた彼はヒットラーのウィーン入場を中継し、その後欧州特派員としてアメリカに短波でニュースを送った。
テレビ時代では、「シー・イット・ナウ」というフィルムのドキュメンタリー番組、また有名人の自宅訪問番組「パーソン・ツ・パーソン」は大人気だった。
この映画が対象としているのは、「シー・イット・ナウ」でのマッカーシズム批判の番組で、大変よく描かれているが、彼が真面目一方のキャスターだと勘違いするとそれは多分誤りである。
日本で言えば、黒柳徹子の「徹子の部屋」と田原総一郎の「サンデー・プロジェクト」を一人でやっているような者と言えば良いだろう。
描かれているマッカーシズム批判は、極めて冷静で客観的なものだが、彼はCBSの副社長を務めたこともあり、経営陣と対立し自説を単純に主張したた人ではない。
ただ、マッカーシーとの対決には勝利するが、その後急に人気を失う。
そして、テレビは日本と同様に急速に娯楽番組化をして行く。
最後は、ケネディー政権の広報文化担当になるが、さした成果を残さずに終わる。
バックのダイアンのジャズ・ボーカルのように、アメリカが1950から60年代前半の、まだ安定した予定調和的な時代と世界だったころの懐かしさが一番心に残る。