『子育てごっこ』

1979年、三吉京三が、作家きだみのるの子供リカを育てた小説『子育てごっこ』を今井正が映画化したもの。
良い作品だと思う。

脚本は鈴木尚之、五月舎と俳優座映画放送の制作なので、主演の先生夫婦は、加藤剛と栗原小巻と俳優座の連中、きだみのる役は加藤嘉、娘のリカは、牛原千恵である。
リカは、きだが70歳の時に、水商売の女渡辺美佐子に産ませて子で、渡辺と別れてから、リカを連れて学校に入れず、二人で全国を放浪している。
そして、町で本屋をやっている財津一郎が、小説を書いている加藤の山奥の分教場に二人を連れてきたところから始まる。

リカは、自由放任主義の加藤の下で、まったく躾がされておらず、加藤は引き取って育てることにする。
その野生児をまともな子供にして行く過程が映画なので、言わば行動する者として映画的に魅力的な被写体が、本来は整理されてつまらなくなる筋書きなのだが、主人公牛原知恵の魅力によって、その経過は納得できるものになっている。

ともかく加藤の演じる、きだみのるのいい加減さ、わがままさは目に余る。勿論、この原作が三好京三の立場から書かれたものなので、その分は割り引かなければいけないだろう。
だが、1950年代に『きちがい部落』シリーズで有名になったとは言え、1970年代は大した作品を書いていなかったきだみのるが、全国を放浪して行けたというのは不思議である。
松尾芭蕉を出すのは気が引けるが、やはり日本の地方には中央の「文化人」を暖かくもてなす風土があったからだろうか。

最後、きだが死に、母の渡辺美佐子からも捨てられ、加藤・栗原夫妻は、リカを養女にすることにする。
ここで、ハッピーエンドだが、その後、リカは上京して問題を起こし、また三好からはいじめを受けていたことを暴露する。
現実は、実に複雑である。
牛原千恵は、日活の監督だった牛原陽一の娘で、良い女優だったが、すぐにやめたようだ。
フィルム・センター

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