つらい日は

何か、つらいことがあった日は、映画を見て忘れることにしている。
しかもそういう時は、泣ける映画が良い。
そうやっていつも見るのが、中村錦之助主演、山下耕作監督の名作『関の弥太っぺ』である。
長谷川伸の原作でサイレント時代から何本も作られてきたが、脚本は成沢昌生で、細部はかなり創作されている。

若いヤクザの弥太郎は、ゴマのハエで殺された男・大坂四郎から、娘の小夜を吉野宿の澤井屋に届けてくれと頼まれる。
小夜は、澤井屋の娘と大坂と間の子だった。
弥太郎は、宿の人間には名も告げず、45両と一緒に小夜を届けた。

十年後、弥太郎は、出入りの助っ人稼業で、頬には大きな傷ができ悪相に変わっている。
彼は、小夜の父を殺した木村功の箱田森助が、小夜を澤井屋に届けたのは自分だと偽り、澤井屋に居座っていると聞き、森助を斬り殺し、小夜に別れを告げる。
そのとき、彼は、10年前に小夜を澤井屋に届けた時の成沢の手になる名台詞をはく。

「お小夜さん、シャバには、つらいこと、悲しいことが沢山ある。だが、忘れることだ。忘れて寝てしまえば、明日になる。・・・ああ、明日も晴れか・・・」

小夜(十朱幸代)は、この人が自分を助けてくれた人と判るが、そのとき弥太郎は、暮れ六つの決闘に行くところだった。

いつ見ても泣いてしまう作品である。
錦之助の芝居の上手さ、木村功、月形龍之助、夏川静江、武内亨、鳳八千代、沢村宗之助ら脇役の良さ。
木下忠司の音楽も実に泣かせる。
これで、明日には嫌な事は全部忘れられる。

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