『もず』と一緒に借りてきた。原作船橋聖一、脚本松山善三、監督中村登、主演有馬稲子、石浜朗、上原謙、高峰三枝子。
大学生の有馬が家業の不振による上原との政略結婚と、石浜との純愛に悩む話。
恐らく、原作では主人公が水着姿になり、性的刺激もあったのだろうが、公開時期が秋だったためか、有馬の水着姿はなし。だが、やはりきれいだ。このとき、22歳。
それに結構軽くやっているのが良い。大根役者の典型のように言われた有馬だが、それほど下手ではない。少なくとも竹内結子よりは遥かに上手い。
有馬は上昇志向が強く、普通のメロドラマには満足できず、『夫婦善哉』や『ここに泉あり』など、他社出演を異常に希望し何度も事件を起したので、その反動でひどく悪くいわれたのだと思う。
彼女の『夜の鼓』事件など、相当に増幅されているのではないか。
悪役の金子信雄に迫られ、「待って」という台詞を2日間にわたり200回くらいテストされたというのだが、本当だろうか。
『夜の鼓』は、公開時は共産党系の連中からは「後ろ向き」と言われ、増村保造や中平康からは「下手くそ」と言われた作品だが、今見るとすごい映画である。今井正はもっと評価されて良い。
晩年、共産党と部落解放同盟との争いの『橋のない川』事件に巻き込まれたのは、きわめて不幸なことであったと思う。
『ここに泉あり』も、クラシック賛美のところは、いただけないが、いい加減なマネージャー役の小林桂樹の描き方などとても面白い。左翼文化運動の問題点をよく描いていると思われる。