川崎市民ミュージアムで吉田喜重監督の『煉獄エロイカ』を見る。
出演岡田、岩崎加根子、鵜田貝造、武内亨ら。脚本山田正弘・吉田喜重。音楽一柳慧。
「時間軸の解体と再構成によって綴られる政治と革命の物語」だそうだが、筋が全く分からない。
1950年代の日本共産党の武装闘争とスパイ事件があり、70年代の革命闘争やゲリラ誘拐事件が語られるが、さらに1980年に時制が飛んで、そこからこの映画の製作時期である1970年に戻って論争したりする。
筋も意味も不明なのだ。当時のアングラ劇のように、同じ役者が違う人物を演じているらしいので、大変混乱する。今見てもそうなのだから、公開の1970年当時は大変だったろう。
ATG系で公開されたが、記録によれば観客動員数は、27,400人で、日本ATG史上ビリから3番目。因みに、最低は昨年ここで見た田原・清水の『あらかじめ失われた恋人たちよ』の24,900人、次が羽仁進の『午前中の時間割り』の27,600人だそうだ。
この映画の主演者の一人は女優木村菜穂で、木村功の娘。しばらくテレビにも出ていたが、すぐに結婚してやめた。彼女の数少ない出演作品である。
また撮影の大部分が、整備開始当初の多摩ニュータウンと淀橋浄水場が新宿副都心になる前の、水を抜かれた浄水場が写っているなど、東京の変遷の記録としてのみ将来価値がある映画である。
また、一柳の音楽が極めて叙情的で、超前衛的だった60年代の作風から劇的に変化したものの一つとしても注目されるだろう。