『東条英機と日米開戦』

一昨日、TBSが放送したビート・たけし主演の『東条英機と日米開戦』は、なかなか面白かった。
たけしが東条英機を演じた。
日本映画で、東条英樹を演じたのは、1959年の新東宝映画『大東亜戦争と東京裁判』の高田稔、東宝の「8・15シリーズ」の1970年の堀川弘通監督作品『激動の昭和史 軍閥』での小林桂樹に次いで三人目だが、記録映像が前後に挟まれた約4時間の大作。

ドラマ部分(約2時間)も、時代考証をはじめきちんとしているので、「一体誰の演出か」と新聞を見ると、演出は鴨下信一、脚本池端俊策、さすがである。
鴨下氏は、TBSで『日曜劇場』をはじめ、『岸辺のアルバム』等の名作を作ってきた。
だが、いつの間にか役員になり、ついには社長になった。
ところが、オウム真理教に坂元弁護士の映像を見せた「坂元弁護士事件」が起き、その責任を取って社長を辞任された。
その後は、フリーの演出家、文筆家として活躍されている。

今回のドラマを見て、テレビは映画にはない特質があることに改めて思った。
娯楽性と教養・教育性の双方を満たすものが出来ることだ。
映画では、娯楽性は劇映画、教養・教育的機能は、記録映画・文化映画へと完全に別れている。
テレビ局は、内部に報道、教養部門を抱えていることもあり、こうしたドラマと記録の融合が容易に出来る。
こういう方向を、昔は「ドキュ・ドラ」などと言った時代もあったが、テレビの可能性ではないかと思う。

内容的には、東条の唯一のブレーンだったジャーナリスト徳富蘇峰(西田敏行)を中心に添えているのが面白かった。
徳富蘇峰は、真珠湾攻撃の開戦の天皇の詔勅の文章を起草したほど、東条とは親交が深かった。
だが、最後敗戦に終わり、その責任を記者から追及されるとき東条について、彼はこう言う。
「所詮、首相の器ではなかった」
確かに、東条は官僚としては優秀、真面目で、きちんと仕事をするので、昭和天皇からは信任が極めて厚かったらしい。
この辺は、すべてにいい加減で、性格的な弱さと相俟って無責任だった近衛文麿とは対照的だったようだ。

徳富蘇峰に、「首相の器でなかった」と言われては東条も可哀想だが、その首相に率いられた日本国民はもっと可哀想であったわけだ。

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コメント

  1. SS より:

    津川雅彦
    >日本映画で、東条英樹を演じたのは、………三人目だが

    「プライド 運命の瞬間」の津川雅彦は意図的に無かったことにしているのですか?

    あと、TBSのドラマを「日本映画」と呼ぶのはちょっと………

  2. さすらい日乗 より:

    いましたね
    確かに、『プライド』の津川雅彦もありましたが、あれはほとんど喜劇的に見えて、逆効果のように思えましたが。

    日本映画と書きましたが、正確には日本の映画・映像で、と言うべきでしょうが、今やテレビの方が、企画やスケール的にも、映画を凌駕しているときもあると思います。
    区別するのはおかしなことと思います。

  3. さすらい日乗 より:

    丹波哲郎もやっていた
    笠原和夫脚本、舛田利雄監督の『大日本帝国』では、東条の役を丹波哲郎がやっていた。この映画事態があまり記憶にないのだが。

  4. 通りすがり より:

    東条英機の間違いかと(;^_^A

  5. ありがとうございました。訂正しましたのでよろしく。