林真理子による浅丘ルリ子の伝記である。
内容は、ほとんど知っていることだが、浅丘の最初の恋人である小林旭を介しての、美空ひばりとの交友が大変興味深い。
この本の価値は、満州での浅丘の父浅井源二郎氏のこと、そして美空ひばりの素顔を描いたところにある。
ひばりがこんなに純で素直な女性だったとは本当に知らなかった。
美空ひばりに関する本で、今までに一番優れていると思っていたのは、竹中労の『美空ひばり』だった。だが、この本は、彼女の生まれからデビュー以前の戦時中の活動、戦後の大活躍の頃の部分は凄い。
だが、大スターになってからの記述は、竹中が本質的に大スターが嫌いなので、1960年代以降の部分はつまらない。
林のこの本は、その部分を十分埋めるものになっている。
浅丘ではなく、むしろ美空ひばり、小林旭、石原裕次郎ら、戦後の大スターの素顔を知るには最適の本だと思う。