宗教学者島田裕己の『創価学会』(新潮社)を読み、なかなか面白かった。
特に、二代目会長戸田城聖の強い個性とアジテーション能力が組織拡大に寄与したこと。学会が重視する「座談会」や、信用組合から市役所までの様々な制度を利用(しばしば悪用に近いが)した「融資」は、江戸時代以来の庶民金融である無尽や頼母子講の現代的な形態であり、戸田氏自身が金融機関を経営していたこと。
さらに、信者の子供たちへの学会信仰の継承のために、「青年文化祭」があることは、初めて知った。
「青年文化祭」は、パシフィコ横浜にいるとき、国立大ホールでの開催の準備過程を見たことがある。
そこで驚くのは、普通舞台のセットは「張りぼて」で、階段や山台等も、まず「所作台」を敷き、周りをベニヤで囲って作るものだが、学会の文化祭ではすべてを本物で作ってしまうことである。
公演の1週間前に、全国から大工、ペンキ、内装、電気等の職人が会場に来て、大量の木材を運び込み、本物の工作物でセットを作ってしまう。
仕事が終わると、彼らはホールの椅子や床に寝て翌日の作業に備える。
全国に、この種の職業の信者は多数いるのだから、学会内部で全部でできるわけだ。
多分、その上に本番では、音楽教師、ダンサー、演奏家、さらに歌手等の芸能人も特別参加し公演をやるのだろう。
そして、島田が指摘しているのは、この文化祭への参加を通じ、学会は現在の信者である親の世代から、彼らの息子や娘の次世代への信仰の継承という、日本の他の新興宗教がどこもできていないことを乗り越えることに成功しているのだそうだ。
そんなに重要な行事であるとは全く知らなかった。
だから、多額の金を掛けているのだろう。
パシフィコの営業担当から聞いたのは、
「金はいくら掛かってもいいから、やるんです」という学会側の言葉だったが、それは重要な事業だったからなのだ。