『KEIKO』

映画『KEIKO』は、フランス系カナダ人、クロード・ガニヨン監督が京都を舞台に若い女性を主人公に作った青春映画の傑作で、1979年に日本ATGで公開された。
京都で一人暮らしをしているケイコが、平凡な見合い結婚するまでが淡々と描かれる。
ガニヨン監督は、日本で語学を教えていて、若い女性が次から次へと見合いで結婚するのを大変不思議に思い、この作品を作ったと言う。
初め、映画館で映画を見ていると、変な男が隣にいて痴漢に会う。その映画は、京都市の広報映画と高林陽一監督の『往生安楽国』であることが最後で分かる。

ケイコは、高校の時の教師に会い、「23でバージンなんておかしいですか」と言い、ホテルに行く。
その後、偶然喫茶店で会った、ブルース・リーを思わせる若いカメラマンの男を好きになり、見事部屋に連れてきてベットを共にし、恋人のように付き合うが、彼には結婚していて子供までいた。
会社のテラヤマ君とも付き合うが、どこかぴったり来ない。
二人で奈良に遊びに行ったときの写真を喫茶店で見ながら会話を交わすところが実に面白い。
テラヤマ君の好意を知りながら、それをもてあそぶケイコの乙女心の残酷さ。
これを久しぶりに見て思うのは、人物が皆タバコをやたらに吸っていること。
また、ケイコの部屋には当初は電話もなく、また風呂もなく、彼女らは銭湯に行っている。

最後、ケイコは、会社の同僚の女性カズヨさんと酔ってレズ的関係にもなってしまうが、翌日のケイコの台詞、「昨日のは、なかったことにして」
あくまでも普通で行くのだ。
そして、見合いし、最初は渋っていたケイコも、その男と結婚する披露宴の入り口の挨拶の列で終わる。
男は、なんと最初の映画館で痴漢をした同じ役者なのである。

日本ATGの青春映画で、男は『サード』が一番だが、女では、この『KEIKO』が最高だと思う。
音楽は深町純。
改めて見て、衣装が良いのに気づいた。ケイコが着ている服は、きわめてセンスがよく、気が利いている。
公開当時は、桃井かおり主演、東陽一監督の『もう頬杖はつかない』が、馬鹿当たりしていたが、私たちはこの方が遥かに上だと言い合っていた。
役者が、関西のセミプロの連中で、多分このときプロだった役者は、カズヨを演じたきたむらあきこさんだけだろう。主人公の若芝順子は、京都の学生だったらしい。
きたむらさんは、その後役者はやめられて、シス・カンパニーでプロデューサーとして大活躍されている。
そこには、このカナダ人監督から得た、極めて冷静で客観的に人やものを見る目が影響しているように思える。
1本の映画は、日本の演劇までに大きく影響を残している。
日本映画専門チャンネル

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