戦前、松竹からPCLに移籍して成瀬巳喜男が1935年に作ったトーキー作品。
土曜日、寒くて外に出るのが嫌なので、家で録画してあった成瀬作品を見る。
東京の老舗の酒屋御橋公の没落の話と二人の娘、古風な千葉早智子と現代的な梅園龍子の違い、そしての父親に、前妻の後に妾伊藤智子がいたことを描く。
何しろ、出てくる人間が、みなせこいのが最高。
御橋は、経営が傾く酒屋で、酒に水を入れて薄めて売っている。酒に水を入れて薄めるのは、「金魚酒」と言い、小幡欣司の劇でも出てきた。
お祖父さんの汐見洋は、毎日店の酒を飲んでいるので、味が変わったのに気づいているが、何も言わず、自分は気楽に遊び暮らしている。
最後、店に警察が来る。
酒を薄めていたのが見つかったのだ。
「この次は、何の店になるのかなあ」と道の反対側で会話する床屋は三島雅夫で、客は滝沢修。タイトルには出ていないが、間違いない。多分、左翼で「お尋ね者」だったので、名を出せなかったのだろう。
やはり、成瀬巳喜男は面白い。
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