『狐と狸』は、甲州人の映画だった。
原作熊王特平、脚本菊島隆三、監督千葉泰樹。昭和34年制作。
甲州の洋服を行商するインチキ商人、加東大介、小林桂樹、山茶花究、森繁久弥、三井弘二らの話。大学出の夏木陽介が新人の行商人。
潮来の水郷地帯の農家に「純綿」と言って化繊、スフの洋服を売りつける。
原作の熊王は勿論甲州人で、脚本の菊島も同じ、この時期東宝グループの指導者だった小林一三も、人も知る甲州人。すなわち、この映画は甲州人による甲州人を描いた作品なのである。
最後、村人を騙して大もうけした加東が、森繁によって大部分の金を持ち逃げされる、という正義による復讐が、当時の東宝映画の道徳性である。
つまり悪い奴はどこかで制裁される。「悪い奴はよく眠らない」のである。