『銀座カンカン娘』

1949年春にヒットした高峰秀子の曲の映画化。
主演は、高峰の他、灰田勝彦、笠置しず子、そして古今亭志ん生とは珍しい。
制作の青柳は、東宝に復帰した後、「落語長屋」シリーズなどを監督しているほどなので、落語が好きだったのだろう。

貧しい絵描きの高峰と歌手の笠置が、得意の歌を生かして銀座の流しになり、幸福を得るまでの他愛のない話。
岸井明が、歌手仲間として出て来るが、その体重で家の中の物が落下するルーティーン・ギャグがあるが、今見ると全く笑えないギャグ。

制作は、東宝ストの反組合派で活躍した青柳信雄、監督は島耕二、シナリオは山本嘉次郎と中田晴康、音楽は、勿論服部良一。

中で、流しをしている高峰が、クラシック・コーラスに固執する灰田に向かい、「大衆芸術の意味を説く」のは、新東宝の立場の主張であり、本家の芸術派の東宝への対抗意識だろう。
灰田が「酔いどれ芸術か」と言うのは、明らかに東宝のこの年の名作、黒澤明の『酔いどれ天使』への揶揄だろう。
横浜市中央図書館AVコーナー

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする