グサン氏、死す

5月20日のことだが、インドネシアの歌手、作曲家グサン・マルハルトノ氏がなくなられた。92歳。
彼は、多くの日本人が知っている『ブンガワン・ソロ』の作者なのだ。
私たちも、昔々松田トシさんの歌で聞いていたときは、インドネシア民謡と言われていた。
そして、なんと映画化もされているのだ。
新東宝で、市川崑監督、森繁久弥主演の戦時中の話である。フィルム・センターの市川崑特集上映で見たが、なんとも不思議な作品だった。
だが、この『ブンガワン・ソロ』は、民謡ではなくて、グサンさんが作られた曲なのである。
勿論、そこにはインドネシアの古曲やクロンチョンの調べも入っているが、間違いなく新作なのだ。
彼は、日本の関係者の招聘で、日本にも何回か来た。
多分、2度目のときだったが、私も中村とうよう先生の厳命で、会場確保をしたことがある。
そして、公演は最高だった。
当時、もう相当なご高齢だったが、自らの歌唱は力強く、また滔々として、まことに南方の調べそのものだった。
日本とインドネシアをつないだ功労者・グサンさんのご冥福を心からお祈りする。

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