日中戦争の南京攻撃戦等で、武勲を立て「軍神」とされた西住小次郎を描く松竹大船映画
戦争映画嫌いの城戸四郎が、嫌々作らせた作品だが、松竹には珍しく戦争映画としては、ヒット作になる。
監督は吉村公三郎、脚本野田高悟、主演は上原謙、佐分利信や笠智衆、坂本武や磯野秋雄といった脇役の連中も出る。
女性は、中国人女の桑野通子のみ。
実際に中国でもロケしたようで、さらに記録フィルムも挿入し、スタジオのドラマ部分と混ぜ、竹脇昌作のナレーションも入れ劇を盛り上げている。
吉村公三郎は、戦後は松竹を離れ、新藤謙人と近代映画協会を作り、各社で監督するように、松竹大船調の枠を越えた作品を目指している。
簡単に言えば、ドラマチックということである。
本編の前に、「朝日世界ニュース」が上映され、1939年に東京で行われた軍事博覧会のイベントで戦車パレードを見る、故西住中尉の夫人の姿が映る。軍国の妻である。
また、パレスチナ情勢も紹介され、英国の後押しでユダヤ人が委任統治領のパレスチナに入植し、アラブ系が迫害されつつある状況が解説される。
当時、日本は反英国なのでユダヤ側を非難する論調なのが興味深い。
フィルム・センター