昭和17年10月に公開された、五所平之助監督のメロドラマ。
戦時下で最もヒットした恋愛映画で、先日見た映画『氷雪の門』でも、女の子たちが、この映画について話合うシーンがあった。
灰田勝彦の主題歌「紫煙る新雪の」でも有名だろう。
原作は、藤沢恒夫の新聞小説で、京大を出て国民学校の教師となった水島道太郎と近所に住む女医月丘夢路の恋。
製作は大映東京だが、舞台は神戸になっている。
そこに、隣組仲間の老言語学者薄田研二(当時は高山徳右衛門)の娘美鳩まり、薄田の弟子のモンゴル語学者・井染四郎が関る。
時代を反映し、井染は南方に派遣され、美鳩は、井染と結婚を決意し、薄田も娘夫婦に付いて南方に行くことになる。
水島は、教育召集を受け、そこから月丘への求婚の手紙を出す。
新雪とは、ボルネオ島の最高峰キナバル山の頂上の根雪のことだそうだ。
月丘夢路の美しさは、信じがたいほどである。
よく「なぜ古い映画bを見るのか」と聞かれるが、それは「昔の映画には、美男美女が出てくるからだ」と言える。
美男は、どうでもいいが、美女を見るのは、映画を見る最大の楽しみである。
日本映画から、美女を追放してしまったのは、1970年代以降の日本映画の最大の誤りで、そこには日活ロマン・ポルノの役割が大きかったと私は思う。
月丘夢路は、先日、夫の井上梅次は亡くなられたが、いまだにお元気であるようだ。
美人薄命ではなく、美人長命と言うべきだろうか。
フィルム・センター