運命の女 三浦光子

渡辺邦男監督の『大菩薩峠』を見て、「お浜は、三浦光子が一番良いのではないか」と思った。

後の東映の片岡千恵蔵主演、内田吐夢監督作品では、長谷川裕美子が、大映の市川雷蔵主演では、中村玉緒が、東宝(実際は宝塚映画だが)の岡本喜八監督作品では、新珠三千代が、それぞれお浜を演じたが、中で三浦光子が一番あっていたように思う。
三浦光子を多分最初に見たのは、西河克己監督の映画『若い人』だったと思う。
ここで三浦は、吉永小百合の母親で、北村和夫とできているが、石原裕次郎にかまをかけたりする、実にだらしない女なのだ。
また、成瀬巳喜男の『稲妻』でも、男運の悪い不幸な女を演じている。
実際に、三浦光子はアメリカ人と結婚するが、騙されたような形で、上手く行かなかったようで、まさに不幸を背負ったような女性だったらしい。

机竜之介は、江戸でお浜と貧乏生活で暮らしているときに、宇津木文之丞との戦いを思い出して言う。
「あの戦いが、殺気を持ったのは、お前という女がいたからだ」
これは、『大菩薩峠』という小説の一つの核心ではないかと思った。

主人公机龍之介は、お浜という女に会ったために運命を狂わされてしまうのである。
まさに三浦光子は、「運命の女」だが、私は容易にファム・ファタールとは言わない。

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コメント

  1. なご壱 より:

    Unknown
    私も15日に観ました。三浦光子のお浜について、さすらいさんに同感です。
    私が三浦を最初に観たのは、清水宏の「信子」の生徒役でした。