山本富士子2本

池袋文芸座で、山本富士子映画2本。『湯島の白梅』と『白子屋駒子』
『湯島の白梅』は、言うまでもなく『婦系図』であり、『白子屋駒子』は、山中貞雄の『人情紙風船』でも有名な「髪結新三」の事件である。

感心したのは、『白子屋駒子』で、舟橋聖一の原作は、飯島友一郎の『歌舞伎細見』の「白子屋お熊」の項を見ると、ほとんど実際の事件に沿っているようだ。
脚本は、監督の三隅研次の師匠の衣笠貞之助。
木場の材木屋の白子屋の娘お駒(山本富士子)は、評判の美人、番頭の忠八(小林勝彦)と相思相愛の仲だが、身分違いで容易には一緒になれない。
主人の中村鴈次郎は気が弱く、女房の細川ちか子が店の実権も握り、廻り髪結い新三の村上不二夫と出来ている有様。
身代が傾きつつあるので、両親はお駒に持参金付きの婿千秋実を取らせる。
だが、些細な事件で入牢した小林が磔になったからとの嘘で、山本富士子の小林勝彦への愛を諦めさせるが、小林は間もなく出所してきてしまう。

最後、蔵の中での小林と千秋の争いで、千秋は死に、そのため店は閉門、山本富士子と小林勝彦は死罪になる。
磔への馬上の二人は、晴れやかな表情だった。
ここは、明らかに溝口健二の名作『近松物語』の最後を連想させる。
大映京都の美術、特に山本富士子の衣装がすごい。カラー画面に光輝いている。

『湯島の白梅』は、マキノ雅弘監督、長谷川一夫、山田五十鈴主演の東宝の「総集編」のように、お蔦の死のところまで。
本当は、蔦の死後、恋敵河野一族にまつわる血統の話があるのだが、そこは早瀬主税の鶴田浩二の話になってしまい、山本富士子主演としては無理なので、切ってしまったのだろう。
真砂町の先生で、ドイツ文学者酒井俊蔵は森雅之、お蔦の先輩芸者で、実は酒井の子妙子を生んだ小芳は、杉村春子、監督は衣笠貞之助。
湯島での「別れろ、切れろ」の台詞はあるが、小芳の「あたしたちは、因果だね」の名台詞はなく、がっかりした。

フィルム・センターでやっている田中絹代特集では、『婦系図』の最初の映画化が上映されるので、いずれ見るつもり。

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