『昭和ひとけた社長対ふたけた社員』

1971年、東宝で作られたサラーリンマン映画の末期的作品の1本。
脚本は笠原良三、監督は石田勝心、小林桂樹、黒沢年男、酒井和歌子、加東大介、藤岡琢也らの出演。

大日本スチール株式会社重役の小林は、不況から自宅待機の身で、釣堀で暇をつぶしていたが、ある日社長の東野英治郎からお呼びがかかる。
今度こそは、クビかと思うと、「担当の開発部を子会社にして、そこの社長になれ」との辞令。
同じく部下で自宅待機組だった加東大介と藤岡琢也も、それぞれ新会社の総務と営業担当の重役になる。
この昭和ひとけたの連中に対し、二桁の社員が課長に抜擢された黒沢年男、松山省二、佐々木勝彦の若手連中。
そして、彼ら若者の働きで、「家庭用空気清浄機」を開発して万事めでたしとなる。

大した作品ではなく、お手軽映画の見本と言えばそれまでだが、この大企業が分社化し、子会社を作る筋書きは、当時の東宝の状況を考えると、大変興味深い。
1970年代東宝は、映画製作部門の縮小を図り、東宝の下に、東宝映画、東宝映像、芸苑社、青灯社らの製作会社を作り、従来の子会社だった東京映画、日本映画新社、宝塚映画と合せて分社化と人員整理を行っていたからである。

現在では、この分社化は、これらの子会社が存続していないことに示されるように、ほとんど失敗に終わった。
中では、東宝映像が『日本沈没』『ノストラダムスの大予言』などの特撮もので、芸苑社が『華麗なる一族』『金環食』のような文芸作を残したのみで、ほとんど映画史に残るような成果は上げられなかった。

その意味では、この映画は、そうした当時の東宝の分社化の流れについての考えを現したもののようにも見えて来る。
だから、最後のハッピーエンドは、彼ら当事者たちの願いのようなものなのかもしれないと思えてくる。
司美智子が、クラブのマダム役で出ていたが、タイトルにあった菱見百合子は、どこに出ていたのか分からなかった。
衛星劇場

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