1960年代の初め、日曜日の夜8時にNHKから放送されていたドラマの映画化である。
このテレビ・ドラマは、淡路恵子が女社長に扮する化粧品会社プランタンの社員たちの群像劇で、クレージー・キャッツ、渥美清、三木のり平、ナベプロ三人娘等が出る豪華キャスト番組であり、当時「札束番組」と言われたものだ。
私たち、若者は日曜日の夜は、この群像劇の楽しさに酔い、明日からはまた学校だ、と思ったものである。
ザ・ピーナッツの「ワーオ、ワーオ、お腹の底からワーオ」という曲もかなり流行った。
これはその東宝での映画化で、監督は古沢憲吾、女性のキャストは、淡路の他、団れい子、藤山陽子、浜美枝、中真千子とグレード・アップしている。
テレビでは、植木等はあまり出てこなかったと思うが、ここでは大活躍している。
また、谷啓が、フランス帰りの技術者のニセ者で出ている。
本物は、なんとビンボー・ダナウであり、今は誰も知らないだろうが、当時は淡路恵子と結婚していた、フィリピン出身のジャズ・ポピューラーソングの歌手としてかなり有名だった。
だが、所詮は二流歌手で、この作品に出たのも、淡路の力に違いない。
この映画化を見ていて、この程度の娯楽作品に心をときめかせていたのかと、我ながら当時のわれわれ若者の貧しさがいとおしくなった。
この青春ドラマの終了後、NHKのこの時間帯は今日も続く「大河ドラマ」になる。
話は、プランタンのライバル会社トレビアンとの産業スパイ合戦に坂本九、ジェリー藤尾らの活躍で勝利するというもの。
ここでも専務の平田昭彦が、実はライバル会社のスパイというのが興味深い。
平田昭彦は、井伊直弼暗殺の映画『侍』でも、水戸藩の浪人一味の幹部、実は幕府の犬という役を演じることになる。
悪役は、上手い力量のある俳優にのみ可能という例の一つであろう。
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