正岡容とゆかりの人々

高円寺の円盤で行われている、岡田則夫さんの「SP講談 20世紀之大衆芸能」シリーズで、今回は、正岡容と彼に関係する人のSP盤を聞くイベントが行われた。
正岡については特に書かないが、作家としてのみなく、実際に落語家として高座にも立った方であり、最初に昭和初期の彼の新作落語『恋のケーブルカー』から。
男女の追っかけを上下するケーブルカーで展開するもので、多分ロイドなどアメリカのサイレント喜劇の翻案だと思われた。
このように初期の彼の新作ものは、ナンセンスとドライなギャグを入れたもののように思える。

彼が弟子入りした、大阪の三遊亭圓馬の『三人旅』、新聞記者の松崎天民の『浪花節漫談』等は、彼と関係のあった人のもので、様々な世界に付き合いの多かった正岡ならではのもの。

当時は蝶花楼馬楽だった林家彦六(林家正蔵)の新作『肉弾紙芝居』は大変貴重なもので、正蔵になったからは、古典のみになっていた正蔵も、ナンセンスで時局ネタ(肉弾三勇士)をやっていたとは驚く。
実際に、岡田さんが正蔵のところに行き、これらの新作ものについて聞いたところ、彼は知らんぷりをしたそうだ。

古川ロッパとは、正岡の代表的短編小説『円太郎馬車』がロッパ劇団で劇化されたなど、多くの付き合いもあったようだ。
ロッパと山野一郎の『声帯模写オンパレード』は、実に傑作、誰か早くCDにしてくれないだろうか。
相模太郎の浪曲『灰神楽三太郎』も正岡の作で、ここでも不器用で失敗ばかりしておる三太郎が、世話女房の力で世に出るというもののようだ。
これは、『円太郎馬車』と同趣向で、極めて早熟の秀才だった弟平井功に対し、なかなか文壇等で認められずゲテモノ扱いされていた正岡容自身のことが投影されているように見えた。
それにしても、岡田則夫さんのSPレコードコレクションは本当にすごい。
全部のリストは、岡田さんのサイト『巷間芸能研究室』にあるので、興味のある方は是非ご覧ください。

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