昨年亡くなられた桂歌丸師匠の追悼で、出演作、1967年の日活映画『喜劇・大風呂敷』が南公会堂で上映された。
私は、前から中平康はあまり評価していないが、この日活での晩年の作品はひどく、途中で寝てしまった。一応、アイディアはいろいろあり、ベトナム戦争の前線に元日本兵の藤田まことが投降してくるとか、三遊亭円楽が四国独立運動をしている、藤田の戦友の田中邦衛が「ジャンパン・スピリット」という会社を東京に持っていてアメリカ人をセックス攻撃して骨抜きにしているなどだが、どれも一時的でそれだけ。多分、脚本の才賀明が、弟子の学生たちに書かせたのを寄せ集めたが、まとまらなかったのだろうと推測する。早稲田大学映画研究会の上にも才賀氏の下でシナリオを書いている方がいた。
見るべきは、予想どおり芦川いづみの可愛さだけ。また、米兵の一人としてロベルト・バルボンが出ていた。彼はキューバ出身の選手で阪急で活躍したが、関西弁でも有名だった。
その後の、佐藤利明さんの『落語と映画 映画と落語』は、これまでに聞いたことのない「落語と映画論」だった。
その一つは、落語と落語家の映画は多いが、川島雄三の『幕末太陽伝』以外に成功したものはないとのこと。
テレビでの『笑点』のヒットを頂点にした「演芸ブーム」以前の落語映画には、柳家金語楼以外に映画に出た落語家はないとのこと。戦後、東宝は落語ネタの『落語長屋シリーズ』を多数作ったが、そこにはエノケン、金語楼、ロッパなどの喜劇人は出ているが落語家が出ているのはないこと。
逆に、名人が出ている場違いな作品があり、古今亭志ん生が高峰秀子主演の『銀座カンカン娘』に、三遊亭金馬がフランキー堺主演の『羽織の大将』に、三遊亭円生がドリフターズの『ツンツン節』に出ていることなど。
『幕末太陽伝』以外に成功作がないのは、落語の話の面白さに寄りかかっていて、脚本をきちん作っていなかったからだろうと思う。