『GO HOME』

税と社会保障の一体改革の民主、自民、公明の三党合意ができた翌日、吉祥寺の吉祥寺シアターという安普請の見本の劇場で、早船聡の作・演出の芝居を見る。
吉祥寺シアターは、座席の床が固定式ではなくて移動組立式らしく、フラフラしていて階段状の通路を上下すると揺れるひどい建築であり、なるべくこの劇場には行かないようにして来た。

早船は、以前新国立劇場での彼の作の『鳥瞰図』が比較的面白かったので、彼の劇団サスペンデッツも見ることにした。
話は、北の方の地方都市で知り合った男女2組の20年くらいが描かれる。
中学、高校、そして進学や就職、そして結婚と別れや悲劇など。
喩えて見れば、1970年代後半に盛んに作られた日活ロマン・ポルノの青春映画のような感じである。

そして、2組の男女がいずれも不幸に陥る。
主人公北島和博の父親は、飲んだくれのアル中であり、彼の暴力が和博のトラウマになっていたことがわかるが、最後彼も父親のように川に溺れて死んでしまう。
まるで、最近話題の生活保護の親から子へ、さらに孫へとつながっていく「負の連鎖」のように。
まあ格差社会劇と言えるかもしれない。

主人公の北島和博も、その息子の尚人も、なんども鮭が川に戻ってきて、イクラの卵を産んで死に、その子が海に出て大きくなり、産卵になると再び川に戻ることを言っていた。
これは、勿論人間や生物のリンネを意味している。
因みに鮭が産卵を川という淡水で行うのは、鮭はマスから進化したもので、何億年か昔、日本海が陸封されて淡水だった時、マスがそこに棲んでいた。
ところが、日本海は湖から海になり、そのときマスの中で海水にも適応できるように進化した鮭が生まれ、それが世界中に広がったのだそうだ。
個体発生は、系統発生を繰り返すので、鮭は進化の元である淡水に戻るのとのこと。
となると、この早船聡君は、その発生の元は、やはりかつてのアングラ劇なのだろうか。
ときどき挿入されるアングラ風の子供劇が不快だった。
吉祥寺シアター

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