前から見たいと思っていた映画が、代官山の蔦谷書店にあったので、すぐに借りてくる。
今や、この店は日本国中で、一番DVD,CDがあるというので有名だが、確かにすごい在庫である。
店頭に並べていないものも、バックヤードにはあるようで、きわめて親切に探してくれ、まるで公共図書館並み、いやそれ以上だろう。
肝心の映画だが、1975年にこんな刺激のない、のんびりした映画ができたのかと思うと唖然とする。
東北のダム工事現場で、大学生の中村勘九郎(現勘産郎)と渡り土方の渥美清が会い、互いに意気投合する。
勘九郎は、すでにデザイン会社で働く松坂慶子と一緒に戸越銀座のアパートで生活していて、当時の言葉でいえば、同棲時代である。
松坂に両親はすでにいなくて、伯父の有島一郎が親代わりで、二人を別れさせようとするが、そこで部屋にいた渥美は言う。
「確かに甘えているよ。でも惚れている男を甘えさせて何が悪いんだい。それが好きあった男女の仲というものだ」
この論理が正しいとも思えないが、渥美の演技で言われると、「はい、その通り」と言いたくなるのは、さすがに渥美清の芝居の説得力である。
最後、勘九郎は、渥美に付いて瀬戸内海の小島に行く。
そこには、渥美の妻の佐々木愛と子供がいた。
だが、渥美はある事情から島に6年も戻っておらず、妻の佐々木愛は、渥美の親友でもある米倉斉可年と結婚して、子供もいるのであった。
言ってみれば、柴又に帰れない寅さんである。
もし、寅次郎が結婚していれば、こうなったのかもしれないという気はする。
東京に戻った勘九郎は、松坂に電話で「本当に愛しているよ」と言い、二人の愛を確かめるのであった。
ほんとにほんとうにご苦労さん。
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