山田信夫脚本、恩地日出夫監督の東宝青春映画。主演は酒井和歌子と黒沢年男。
酒井は、「テンコ」と呼ばれている。これは、山田が日活で女優・松本典子と親しくなり、蔵原惟善監督、裕次郎・ルリ子の名作『憎いあンちくしょう』『何か面白いことないか』の主人公名をテンコとしたのから来ている。
川崎の自動車工場労働者と零細商店事務員との恋。酒井は市営住宅に、黒沢は公団住宅に住む。
黒沢の狂騒的演技が気になるが、当時の若者をかなり正確に描いている。歌声喫茶がでて来るのが、恥ずかしい。
東宝の青春映画は、森谷司郎監督、内藤洋子主演の『兄貴の恋人』が最高作で、誇張の多い極端な日活とも、善意の押しつけで嘘臭い松竹とも異なり、比較的に評価は低いが、青春映画として相当に的確だったと思う。
不良少年にも優等生にもなれない普通の若者をよく描いていたのは、やはり成瀬巳喜男らの伝統と影響なのだろう。