空洞化している自民党の地方組織

自民党の総裁選挙は、安倍晋三元首相が当選する結果になった。
「昔の名前で出ています」
は、歌謡曲の世界だが、美しい国日本はどうなったのだろうか。

谷垣禎一前総裁が立候補を辞退したのには驚いたが、結局今の自民党には、かつてあった「良質な保守」というものは、もうほとんどなくなったように思う。
横浜市会の歴代の議長を見ても、自民党にも様々な議員がいたが、議長になる議員は、やり手だが少々クセがある議員ではなく、むしろ大人しくて目立たないが良識的で、言わば功なり遂げたような人が、自民党議員団の中で自然に選出されて他の党派からも認められて議長になってきた。
それなりに自浄作用がよく効いていたように思う。

それは、言わば儒学の「徳治主義」のようなもので、上に立つ者が、優れた徳を持っているとき、初めて世は治まり、上手くいくという考えであり、政治家の能力は二の次としたものである。
これが現代に正しいかどうかはわからない。
だが、今度の自民党の5人の総裁選候補の徳が高いとは、私には見えない。

要は、小泉純一郎が推し進めた「自民党をぶっ壊す!」路線が、ほとんど成就してしまった結果のように思える。
5人はすべて小さな政府、反福祉国家論者である。
だが、不思議なことに、安倍晋三がTPPには反対なように、それぞれ結構首尾一貫していない。
領土、領海問題のような愛国主義のみを声高に叫ぶのは、威勢は良いが、カラ元気のように見える。

かつて日本社会党には、「左翼バネ」というのがあり、危機になるとより左よりの路線をとった。
今回の自民党の総裁選挙劇は、「右翼バネ」が効いた結果のように思える。
小泉政権の力によって、従来は自民党の地域の支持組織だった農協をはじめ、医師会、ゼネコン、郵政(特定郵便局)等は、ほとんど地域で組織を失っている。
この間の自公連立政権の期間、その穴埋めをしてきたのが、地域の創価学会・公明党である。
自民党に詳しい人に聞くと、多くの地域では、「今はむしろ組合を基盤とする民主党の方が組織はきちんとしていて運動は活発で、自民党は各議員の個人的後援会のみになっている」そうである。
かつて、日本社会党から新自由クラブ、日本新党、さらに新進党、そして民主党の選挙は、「無党派の風頼み」と言われた。
だが、小泉構造改革の結果、抵抗勢力を切り捨てて、自民党は無党派層にまで手を伸ばしたが、同時に「風頼み」になっているとのことである。

世論調査では、自民が1位なので、自民、公明、維新の会あたりの連立政権になる、との予測だが、そう簡単になるだろうか。
今は大人しくしている「国民の生活が第一」の小沢一郎が、黙ってこのまま自民党政権の返り咲きを許すことはないと私は思う。
奇しくもこの日、彼の政治資金規制法違反の控訴審が、たった1日で結審してしまった。
結果は決まっている。
この次は、小沢一郎の動きが一番の注目である。

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