『エラブの海』

1960年に公開された多くのコンクールで評価された有名な作品だが、「記録映画」なので、上映されることがなく見たことがなかったが、なんとツタヤにある。

見ると、孤島に老人と孫の少年、二人の海女の娘の家族というのも不思議で、
海女の二人が顔も体も非常にきれいで、「これはやらせでは」と思いネットで調べる。
4人は、全く別々の人間たちで、海女は本当のプロだそうで、道理で仕草も本物のはず。
これは記録映画ではなく、沖永良部島の素人を使った劇映画であることが分かる。言わば、イタリアのルキノ・ビスコンティの映画『揺れる大地』と同じ、「素人を使った劇映画」なのである。

だが、お盆の島の大イベントである闘牛、さらにマグロの群れが来たとき、島の男たちが総出でする「追い込み漁」の映像は素晴らしい。

最後、冒頭で夜明けの砂浜で産卵された海亀の子が砂地から這い出してくるところでエンド。
脚本・監督の西尾善介は、戦前から東宝文化部の監督で、東宝争議後は東宝教育映画に移り、さらに同社解散後も各社で、最後は日本テレビの「ノンフィクション劇場」等でも多数の作品を作った方である。
1960年代の日本の僻地は、完全な途上国だったことが分かる貴重な映像である。

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