大映末期1969年の「ヤングパワーシリーズ」の1本で、前作『新宿番外地』は、監督が同じ帯盛迪彦で、公開当時に見てつまらなかったので、これも期待せずに見ると意外にも気合の入った作品だった。
浪人生の梓英子は、富山の役人の父親が汚職の汚名をきて自殺したショックで電車を乗り過ごして二次試験に遅れ、東都大学に不合格になる。
この東都大学というのは、東京大学のようで、学部長役の内藤武敏が、最後の方で、封鎖解除の演説をするが、これが当時の東大総長代行の加藤一郎ソックリで非常に笑えた。
梓は、町をふらついていると、学生デモに巻き込まれ、反射的に戦ったことから、学生に仲間と間違えられ連れて行かれて、バリケード封鎖中の大学構内に入る。
機動隊との活躍の姿をいんちき週刊誌のカメラマンの峰岸隆之介に撮影され、週刊誌のグラビアに載る。
一躍、評判の女闘士になった梓英子。
彼女は、大学の中で、言わばニセ学生として活躍することになるが、偽学生といえば、大江健三郎原作で、帯盛の師匠でもあった増村保造が監督した『偽大学生』もあった。
梓は、次第に学生たちの行動の欺瞞に気づくようになり、リーダーの女で、梓に反感を持つ笠原玲子からは、偽学生がバレた時には、下着姿にされてしまう。
リンチ場面がなかったのは残念だったが、上昇志向性が強い梓英子が拒否したのだろう。
梓英子は、大映に入る前は、森美沙の名でピンク映画に出ており、その前歴には触れられたくないと聞いたことがある。
笠原とは、最後は女性同士の奇妙な愛情で結ばれるが、大学がついに機動隊を導入してバリケード解除をし学生を逮捕したとき、梓は大学の屋上から飛び降りて自殺してしまう。
当時、東京大学のバリケード封鎖が機動隊によって解除されたとき、三島由紀夫は、
「学生が一人でも『天皇陛下万歳!』と言って飛び降りてくれれば、自分は賛同した」と言った。
三島由紀夫が、この映画を見たかどうかは知らないが、見たらどういう感想を持っただろうか。
この映画の前に見た『エデンの海』は、松竹で鶴田浩二と藤田泰子で作られた映画のリメイクであり、この作品の監督西河克己は、前作中村登の助監督だったそうだ。
地方の女子高の新任教師高橋英樹が、エキセントリックな女学生和泉雅子に振り回されるという『若い人』と同じ趣旨の作品で、和泉雅子が水着で馬に乗って町中を走るというところにしか趣向がない映画。
生真面目さは高橋英樹によく合っているが、変な主題歌が大変おかしい。
阿佐ヶ谷ラピュタ