これもシスター・ピクチャーで、鈴木清順の監督二本目。
以前、今はない大井武蔵野で彼の1作目『勝利をわが手に 港の乾杯』という青木光一の歌謡映画を見たが、これも春日八郎主演の歌謡映画である。
主人公の小林重四郎と春日八郎が、鯨を取る捕鯨船の銛打ちなのだから、現在では絶対に作られない映画である。
撮影は、三浦の三崎港で行われたようだが、捕鯨船の母港は、東日本では横須賀港にあり、横浜にも作る動きがあった。
昭和30年代に、大洋漁業は横須賀に捕鯨船の埠頭を持っていた。
だが、それが自衛隊に使用されることになり、その代替えの施設を、横浜港内に作ることになった。
それが、大黒ふ頭の対岸の大黒町の岸壁で、当時では大変珍しい水深11mという岸壁だった。
なぜなら、捕鯨船はそのくらいの大深水が必要だったからだ。
だが、その埠頭は捕鯨が禁止になったことで、捕鯨船の母港としては不要になり、塩水港精糖という大洋漁業の傍系会社が使うことになった。
鯨は、昭和30年代まで、日本にとって一番重要なタンパク源であり、大島渚も、「学食で、鯨一頭分位は鯨ステーキを食べた」と言っているくらいだ。
話は、銛打ちの小林重四郎が老齢化し引退しようとしているのと、彼の子分の春日八郎をめぐる女たちの鞘当である。
女は、高田敏江、小田切みき、高友子などだが、柔道芸者明美京子などのとぼけたユーモアがある。
乾いた笑いの喜劇であり、感じとしては川島雄三の喜劇に似ている。
最後、春日は小林の娘の高田敏江と結ばれてハッピーエンド。
この映画も会社には不評だったそうだが、最後の『殺しの烙印』まで、鈴木清順は日活首脳部には受けの良くない監督だったのだろう。
ナレーションは、清順の弟の鈴木健二。
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