『カメラを止めるな』

評判の作品を見たが、思ったより面白かったというのが正直な感想である。

初めの30分は、ゾンビ映画をノー・カットで撮ったもので、元浄水場というのは水戸市らしいが、非常に面白い場所である。ただ、少し長くて、また全部ノー・カットでやる意味は分からない。実際にはカットが割られている部分もあり、ノー・カットにこだわる必要はなかったと思う。

そして、これは新たにテレビで行われる「ゾンビ映像番組」を全部ライブ中継でやる企画であることがわかる。そして、そのとおりに撮影が行われるが、様々なトラブルが起きるが、スタッフ全体の知恵で無事最後まで撮影できる。一番大きなトラブルが、主人公の監督役の男と準主役の女性が車の事故で現場に来られなくなること。すると脚本を書いた監督が、監督の役をやると言い、女性の役も、現場を見に来ていた監督の妻がやることになる。二人は「台本をよく読んでいるのでできる」と言うのだ。

こういうことは演劇ではよくあることで、私も大学4年生の時、池袋の小劇場で芝居をやり、演出家が友人だったので、当日の舞台監督を引き受けた。ところが、開幕の前夜に準主役の男が病気で出られなくなった。すると演出が「俺がやるよ、台詞は全部入っているから」と本当に急遽演出の男が準主役の役を演じた。初日はたどたどしかっが、その後は堂々と無事演じた。驚くのは、アンケートでは、「その演出の男が演じた役が一番良かった」という感想があったこと。他の役者は言った「1か月間稽古をしてきたのは無意味だったのか・・・」と。

後半は、続くトラブルを解決していくスタッフの努力に笑いが弾けた。特に中年の男が最高で、酒浸りで本当は酒を止めて来たのだが、緊張から本番でも飲んでしまいヘロヘロで演技することになる。

ただ、東宝の山本廸夫監督の『血を吸う薔薇』等を愛好してきた者としては、主人公の女の子は、酒井和歌子とは言わないが、もう少し可憐で弱弱しい子だったらと思った。東宝の「吸血鬼シリーズ」の主役は、今月亡くなられた樹木希林の最初の夫・岸田森で、彼はこの役が好きで大変に思い入れていたそうだ。その山本も岸田も今はもういない。

上大岡東宝シネマズ

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