「抜群の身体能力」とは

野球やその他スポーツ中継でよく言われるのが「抜群の身体能力」という表現で、これは少々気になるときがある。

だが、これは「体はすごいが、頭は大したことはない」というニュアンスを感じることがあるからだ。

特に、アフリカやアジア、ラテン・アメリカの選手に対して言われる時である。

確かに、アフリカのスポーツ選手やミュージシャンが身体を使った表現に優れた能力を持っていることは事実である。

以前、セネガルのグループのコンサートに行ったとき、彼らは本国ではコンサートの前は、サッカーの試合をしてから臨むものだと聞いたことがある。

本当かな、と思ったが、彼らはコンサートでは、夜8時頃から徹夜で、朝方まで演奏するのが普通だというのだから、嘘ではないだろう。

身体能力だが、私の個人的体験から見ても、すべての身体的運動は、頭脳と結びついていて、その指令なくしては一つも動かないものである。

12年前に、私は脳梗塞で職場で突然に倒れ、当初は左半身完全麻痺で、左足、左手もまったく動かなった。

左足の回復には随分と時間がかかったが、比較的早くに手は動くようになった。

その時、奇妙なことに気づいた。

それは、左手は動くようになったが、次の動作に移るとき、反射的にはできず、必ず頭が「次はこうしなさい」と命令しないと何もできないことだった。

例えば、右手で箸を持ち、左手で茶碗を持ち、ご飯を取って食べる。

それが終われば、次は普通は、左手は茶碗を元に戻すが、反射的にはしてくれず、必ず「もう茶碗を下ろしなさい」と思わなければならないのである。

 その時、ああそうなのかと思った。

つまり、当然だがあらゆる動作や運動、ほとんど反射的できる動きもすべて脳が一々順番を考えて次々に命令しているのである。

勿論、それを反射的にできるようにするのが反復練習だが。

つまり、どのように自然に肉体がそれ自体で動いたように見えたときも、それは必ず脳が命令した結果なのである。

頭脳とは無関係に、「抜群の身体能力」が勝手に優れた肉体的活動をするなどということはありえないのである。

身体能力のみがすごい選手などは存在しないのである。

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