40代以下は、黒澤明を見ていない

今回、現代企画室から『黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避』を出して気づいたことがある。

それは、40代以下の人は、ほとんど彼の作品を見ていないということだった。

考えて見れば、確かにそうだろう。

作品の評価、観客動員、実際に見ての感動という点で、彼の作品中で、言わば最後の作品は、1965年の『赤ひげ』になる。

晩年の『影武者』や『乱』は、ヒットしたではないか、と言われるかもしれない。

だが、この2本は、単純に見ると決して面白くなく、ダイナミックではあっても、爽快感はない。

その意味では、かなり後味の良くない作品であり、それをたまたま見た若者が、黒澤明は大したことないのでは、と思ったとしても少しも不思議ではない。

『赤ひげ』を親に連れられて見たとして、1965年当時中学生だったとしても、もう50は越えているはずである。

もちろん、『赤ひげ』のみならず、1948年の『酔いどれ天使』から1963年の『天国と地獄』まではすごい作品ばかりである。

是非、若い人にも見て欲しいと思う。

私の『黒澤明の十字架 戦争と円谷特撮と徴兵忌避』が、多少なりとも黒澤映画の観客を増やすことになることを期待したい。

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コメント

  1. 岩淵 靖弘 より:

    『黒澤明の十字架』読みました
    指田様、こんにちは。
     4月3日のイベントでは、大変お世話になりました。どんな話題でも誰よりもお詳しいことに驚くと同時に、そのお話を楽しくお伺いいたしました。
     
     その時に購入いたしました『黒澤明の十字架』ですが、本日読み終えました。普段は速読気味でいい加減な私ですが、今回はかなりじっくり落ち着いて読むことができました。

     指田様のブログのタイトルにあるように、45歳の私も、黒澤明さんの映画はほとんど存じ上げません。評判がどうとか、面白くないとか言う以前の問題ですね。

     ですから、黒澤明さんの持っていた戦争忌避に対する思いも、頭では理解しながらも、黒澤明さんをご存じな方に比べれば感じ方は弱かったのかもしれません。

     私が特に印象に残ったのは、黒澤明さんそのものより、戦前から戦後にかけての映画界の歴史や大衆文化についてです。

     私が夢中になった円谷さんの特撮のこと、当時憧れだった(笑)『ポルノ映画』の誕生の経緯、戦後の映画会社の変遷など、私が興味を持っていて、しかしあまり知らなかったことが満載で、今では話の話題に使っているほどです。

     あまり詳しく書くと恥をかくだけですので、詳しくは今度お会いした際に一杯飲みながらでもお話しできれば幸いです。

     飲みすぎない程度に。

  2. ありがとうございました
    お読みいただき、ありがとうございます。
    ポルノ映画ではなく、ピンク映画ですね。
    ピンクは、1962年頃から起こった映画で、新東宝等の倒産から出てきたものです。私は、ピンク映画とストリップの実演というイベントを蓮沼の映画館で見たことがありますが、そのくらい映画産業の大不況は大変だったのです。

    ピンクとポルノは違うのです。
    ポルノ映画と言うのは、1960年代末に東映が、東映ニューポルノという名で公開したきに使ったのが日本では最初で、その後1971年に日活がロマンポルノと言い、ポルノ・ブームになります。

    黒澤については、『酔いどれ天使』と『天国と地獄』をまず見るのが良いと思います。

    いずれどこかで飲みましょう。