『東京暗黒街・竹の家』

森下の渡辺信夫さんの「眺花亭」の今月は『東京暗黒街・竹の家』、1958年のアメリカ映画、20世紀フォックスのシネスコで、監督は後に評価の高まるサミュエル・フラー。

富士山麓の鉄道、SL列車が襲われて、武器が強奪される。竹の傘を被った農民など、アジア的な住民がうろうろしている。この強奪シーンは、後のロバート・ライアン出演の『ワイルド・バンチ』でのウイリアム・ホールデンらの強盗団の軍用列車の強奪シーンによく似ていると思う。

さて、警視庁と協力して米軍の憲兵隊が東京のギャング組織に潜入捜査を始めるが、警視庁には、早川雪舟がいて、これも大したことはせず、うろうろしている。

多分、SKDのメンバーによる群舞、築地らしい水辺の集落など、もちろん「国辱映画」としての映像がふんだんに出てくるので、大笑いの連続。

ギャング団のボスは、なぜか渋いロバート・ライアンで、東京の彼らは、パチンコ屋の上りを押さえている。へえ、と思うが、こうした不良外人ものは、日本にもよくあったので、まあ許せる。この家が凄いもので、ベランダからは遠く富士山が見える。今なら、東京スカイツリーに住んでいれば可能かもしれないが。

山口淑子、シャーリー・山口は、ギャング団に一員だったが、すでに殺されている男の恋人で、彼は潜入捜査をするロバート・スタックの親友だった。

室内の障子、ガラス戸などが全部めちゃめちゃ。

お約束のお風呂のシーンも出てくるが入るのは山口ではない。さらに山口が寝る居間が凄くて、畳ではなく筵が敷いてある状況。

床は畳ではなく、全員が靴を履いて歩いている。要は、外のシーンは日本で撮影したが、室内シーンは、ハリウッドで撮影したようだ。結構苦労してセットを作っていると思うが、多分中国系の人がやったのだろう、微妙な感じが違う。

さて、警視庁の捜査が入り、ロバート・ライアンは町中に逃げると、そこは浅草。

国際劇場から松屋デパートの屋上へ、有名な当時屋上にあったスカイクルーザーである。

丸い地球の周りを環状の輪が回っている巨大な遊具で、中は人が歩けるようになっているが、それが少し傾いている。夜は電飾が点いていたので、光ったらしい。「眺花亭」のメンバーは、渡辺信夫さんをはじめ、みな元は下町の少年・少女だったので情報は確かで、本当に環状の輪にライアンは追い詰められて銃殺される。

なんでこんな変な映画が作られたかと言えば、当時の日本は外為規制が強く、外国映画会社は日本で大きな利益を上げても本国に送金できなかったからだ。

だから、日本国内に置いてある金を使って映画を製作したので、当時はこうした外国映画受け入れの会社もあり、大島渚の映画『飼育』を製作したパレス・フィルムもそうだったという。また、こうしたことは日本だけではなく、欧州にもあり、結構多くの欧州映画がアメリカ資本で作られていた。

この国辱映画を見て、あらためて山口を擁護する気になった。というのも、彼ら、彼女たちの俳優に見せられるのはシナリオであり、セットがどのように作られるかは始めは分かりようもないからだ。

ともかく、いかに当時の欧米人が日本をどのように見ていたかを示す歴史的名作と言える。

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