『たそがれの湖』

1937年、東宝で公開された作品、原案は丸木定夫こと秦豊吉、脚本には佐伯孝夫の名もあり、監督は伏水修、音楽は言うまでもなく鈴木静一。

湖を臨む高原に小さなホテルがある。女性のオーナーは細川ちか子、支配人は汐見洋、

「弁護士の藤原さんは、今年の夏はお見えにならなかったわね、部屋は誰かに貸しましょう」と言い合っている。

そこに、大富豪らしい岸井明と江戸川蘭子の親子が来て、彼らにその最上の部屋を貸す。

岸井は、出版社をやっているが、小杉義雄の会社と出版物で訴訟になっていることが新聞に出ている。

と北沢彪の藤原がやって来る。

汐見は、岸井に部屋を譲ってくれと頼むが、その相手が藤原で、彼は小杉側の弁護士なので、「絶対に譲らない」と言う。

江戸川は、藤原に人目惚れしてしまい、実は細川と北沢の間には恋愛感情があるので、細川は心配である。

その夜、ロビーで宴が開かれ、皆が歌い踊る。

ここが最大の見せ場であり、またジャズ、ヨットと海水浴、車、洋食とホテルなど、完璧にアメリカニズムである。

戦前のこの時期、日本の都会では、今と同様のモダンな文化、風俗が成立していたのであり、その意味で日本の戦前と戦後はつながっているのである。

その他、灰田勝彦と神田千鶴子、山根寿子、三木利夫など若手スターの楽しい音楽喜劇であり、最後はそれぞれがうまく結ばれてハッピー・エンド。

監督の伏水修は、戦時中に30代で亡くなってしまうが、原節子が唯一惚れた相手だと言う。

確かに、この軽快で明るく楽しい喜劇的センスは、極めて都会的で、横浜生まれの原節子が多分志向したであろう明るさによく合うものだと思う。

衛星劇場

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