久松静児監督の作品で、一番有名なのは日活の『警察日記』だが、日映で作られた『怒りの孤島』も話題作だった。
この日映とは、ニュース映画の日本映画新社ではなく、昭和32年に大映の専務だった曽我正史が、社長の永田雅一に反逆し京王電鉄や大阪の新歌舞伎座と千土地興行の社長松尾国三のバックで設立しようとした映画会社である。
当時、邦画6社の他に第7番目の映画会社が出来るとで、大騒ぎになり、あの野坂昭如も入社が決まっていたのだそうだ。
だが、永田雅一が政治的に手を廻し運輸省から京王電鉄に圧力をかけ、動きを封じた。
結局、日映は、大会社ではなく、小プロダクションとして発足し、『怒りの孤島』と『悪徳』を作って終わった。
曽我氏は、その後大映第一フィルムという外国映画輸入会社の社長になる。
永田雅一と和解したのだろうが、この辺は実に永田の「大乗的見地」というべきか。
映画『怒りの孤島』は、水木洋子の脚本で、山口県の弧島にあった「舵子」という子供を酷使する「奴隷制」を描いたもので、なかなかの作品だったらしいが、上映されることが極めて少ない。
私も見たことがなく、是非見たいものだ。