『ある剣豪の生涯』

1959年、東宝で作られた時代劇大作、主演は三船敏郎、司葉子、宝田明、監督・脚本は稲垣浩である。

よく知られているように、シラノ・ド・ベルジュラックの翻案で、徳川時代の初期、主に京都を舞台にしている。

剣豪で文の道のも秀でているが、異様に鼻の大きい醜男の三船が、二枚目で剣の腕もかなり立つが文章や口下手の宝田の恋を助ける話し。

本当は、幼馴染の三船も司が好きなのだが、司が宝田が好きなので、彼を守って上げてくれとの願いを聞き、宝田から司への文遣いを演じることになる。

時代絵巻のような画面が美しく、また当時の東宝の多彩な役者が出ていて、とても楽しい作品である。

冒頭に加茂の河原での出雲の御国の興行が出てくるが、歌舞伎の祖先だが、女性が主のレビュー・ショーのような踊りである。

出雲の御国が、おっかないおばさんの三好栄子と言うのがすごいが、三好は東宝の女優では多分一番偉かったのだろう。

関ヶ原の戦いで、宝田は戦死する。

10年後、公卿の娘だった司は仏門に入り、日々を送っている。

毎年三船は法事の日に来るが、ある日落ち武者刈りで、かつての同僚で関ヶ原で裏切った平田昭彦に見つけられ、徳川方の者と斬り合いになる。

平田は、東宝の映画ではいつも裏切り者が多い。

負傷した三船は司の僧院に来て、宝田が遺書として残した手紙を三船に初めて見せる。

文を読まずに暗唱する三船を見て、司は初めて宝田からの文が実は三船のものだったことがわかる。

そして、本当は三船も司が好きだったことにも気づく。

随分と鈍感な、また都合の良い女だが、究極的なプラトニック・ラブだと言える。

稲垣浩も、実は戦争に従事していず、それは小柄だったので丙種だったためだが、ここにもそこへの贖罪的意識があるように見えた。

チャンネルNECO

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