大雪で二日間、食事の買物以外に家にいざるを得なかったので、もう我慢できず再び高円寺に行く。
ドキュメンタリーフェスティバルで、『役者・三国連太郎』を見る。
2時間近いもので、その一部は以前松竹からも出て、見たことがあるが、随分と感じは違う。
上映終了後の監督・撮影の山崎裕氏の話では、全部で20時間くらいあったのだそうだ。
テレビで緒方拳がインドに行く番組を見た三国連太郎から直接に三国に撮影依頼があったそうで、フランスで行われた映画祭から始まり、自宅での三國の姿、インタビューなど。
さらに緒方拳、工藤夕貴、柳美里との対談、内藤武敏、木村威雄、新藤兼人、勅使河原宏、相米慎二、橋下文雄らのすでに亡くなった映画人の三国の出演映画への証言もある。
三国連太郎というのは、非常に不思議な役者である。彼は、卑怯な役、いじわるな役、ひどい悪人などの場合、嬉々として演じる。
日本では、二枚目を喜んで演じる俳優は多いが、そうした普通は嫌がる役を喜んで演じる役者は稀である。
だが、森繁久弥や森雅之らの名優もそうした傾向があるが、実は悪役ほど観客に強い印象を与えることを彼らはよく知っているからに違いない。
そうした三国連太郎の態度をよく表した映画が、東映のヤクザ映画、高倉健の『地獄の掟に明日はない』で、三国は初めは高倉健を助ける弁護士だが、実は裏で悪辣な所業を重ねている男。
最後は、もちろん無残に高倉健に惨殺される。
映画『地獄の掟に明日はない』を見ている人は少ないだろうが、深作欣二の映画『仁義なき戦い』での金子信夫親分を思い出せば良い。
三国連太郎が中東に行って撮った映画に『放浪』があり、フィルムが貸倉庫に保存されている場面も出てくるが、それが公開される日は来るのだろうか。
これの失敗を教訓として、彼は親鸞を描いた『親鸞・白い道』を作る。公開に至るまでには紆余曲折があったが、昔ビデオで見たがそれなりの作品だった。
この三国の作品の後、山崎氏が撮影を担当し龍村仁が監督したテレビの『地球は音楽だ』の中からアフガニスタンの『シルクロード幻視行』と、東ドイツの詩人ヴォルフ・ビアマンを主人公にした『裂けた爪のバラード』が無料上映された。
ヴォルフ・ビアマンも一時注目されたシンガーだったが、その後はどうしているのだろうか。1977年なので、まだ東西ドイツに分裂していた時代である。
ビアマンのハンブルグの家に、ニナ・ハーゲンがいた。彼女も1980年代にドイツの前衛的なロック歌手として騒がれた一人だったが。
座・高円寺