脚本審査の審査員全員がOKしたという城戸賞受賞脚本の映画化で、題名で損をしているが、意外にも真面目に作られていて、非常に面白かった。
福島の小藩が、やっと参勤交代から戻ってくると、悪老中の陣内孝則に「隠し金山の疑惑」を掛けられて、江戸への参勤を命じられる。
それが5日後のことで、通常の隊列とは無理なので、最小の編成で、城主佐々木蔵之介以下、西村雅彦らは、途中で出会った忍者伊原剛志の案内で間道を抜け、山道を歩いて、ついには5日間での江戸参勤を成功させる。
映画としては、「難関もの」で、次から次へと難関が現れては、それをクリアしてゆく。
その典型は黒澤明の『隠し砦の三悪人』であり、遠く言えばジョン・フォードの『駅馬車』にもなり、同時に『グランド・ホテル』形式でもある。
参勤交代も、大名行列は、大藩ならともかくとして、隊列の中身の相当の部分は、武士ではなく、臨時雇いの奴たちだったようで、ここでもそれらとのトラブルも出てくる。
森一生監督、市川歌右衛門主演の作品に『槍踊り五十三次』があり、これも口入屋で仕事を貰って行列に加わる伴奴の話だった。
徳川氏の非情な施策の一つとされるが、よく考えてみれば、地方政府から地域へのパブリック・スペンデングともいえ、今日の言葉で言えば公共事業である。
これによって道路など、流通施設も整備され、江戸と地方との文化交流にもなったはずで、優れた施策の一つだったと思う。
最後、吉宗役の市川猿之助によって本当の狙いが明かされるが、それは書かない。
上大岡東宝シネマズ